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【病気のおはなし】
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アトピー性皮膚炎

■症状
アトピー性皮膚炎:症例

アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因が関係して、かゆみを伴う湿疹が繰り返し現れる疾患です。人間はかゆみをまぎらわせることはできても、かゆみ自体に慣れることはありません。その点だけをとってみても患者様のお悩みは察するに余りあります。

加えて、頭部をかいているうちに脱毛症になったり、目のまわりをかくことで網膜剥離などの目の病気を引き起こしたりすることもあります。こういった合併症を誘発する点もアトピー性皮膚炎の怖いところです。特に目の症状が現れた場合は、早急に眼科も受診してください。

この他にも合併症として、水イボやとびひ、単純ヘルペスなど皮膚の感染症が挙げられます。アトピー性皮膚炎の方は、肌の防御機能に重要な役割を果たすセラミドという脂質が少なく、このために肌の防御機能が低下しています。そのため、皮膚の感染症を起こしやすい傾向にあります。単純ヘルペスの場合、健康な人であれば軽症で済むことがほとんどですが、アトピー性皮膚炎の方だと体中に広がって重症化することもあります。

アトピー性皮膚炎:症例

アトピー性皮膚炎の方の多くは、異物の刺激に反応して産生される抗体の量が多い傾向にあります。これは体の外から入ってくる異物に対して過敏に反応する体質であることを表しています。そして、こういった体質が関係して、かゆみを伴う湿疹が繰り返し現れると考えられています。また、同様にこのような体質が関係して、喘息などのアレルギー性疾患を伴う場合もあります。

他方、先述のとおり体質的にセラミドが少なく肌の防御機能が低下しているがゆえに、通常では表皮内に入りえない物質が入ってきて、それにより肌に炎症が生じるという側面もあります。このように、要因は色々と考えられるものの、原因を特定できないところに、あるいは、原因と結果が複雑にからみ合っているところに、アトピー性皮膚炎の根深さがあります。

同じようなことは、悪化因子について考える場合にもいえます。ダニ、ハウスダスト、カビ、発汗、ストレス、乳幼児の場合は卵などの食べ物なども悪化因子とされていますが、どれか一つに特定できるものではありません。ここにもアトピー性皮膚炎の難しさがあります。しかし、だからといって悪化因子を排除することが無意味というわけではもちろんありません。発汗やストレスをなくすことは困難ですが、ダニなど生活環境に由来する因子は、こまめな掃除を心がけることなどによってかなり減らすことができます。特にダニはアトピー性皮膚炎と深く関係する悪化因子とされていますから、それを排除しようとする努力は決して無駄にはなりません。

同様に、毎日の入浴やシャワーによって肌を清潔に保ち、保湿剤を用いて肌の乾燥を防止するという地道なスキンケアも有効です。実際、軽症の場合は保湿剤のみで症状が改善することもあります。

■治療

アトピー性皮膚炎は遺伝的な疾患なので、これをやれば一発で治るというものではありません。この点を医師として本当に心苦しく思います。完治(根治)を望まれる患者様のお気持ちはごもっともです。また、当然ながら医師も完治をめざして治療にあたるべきでしょう。ですが、「完治ありき」「完治が絶対」という完璧主義にとらわれてしまうと、「全か無か」という考え方に陥りがちです。そこには「コントロール」という発想がありません。

もちろん完治が難しいからといって、諦観や諦念を患者様に求めるつもりはありません。それもまた「無」へとつながりかねないからです。実際、アトピー性皮膚炎は絶対に治らない疾患ではありません。最近では成人型のアトピー性皮膚炎も確かに増えましたが、その一方で年齢とともに軽快していくのがこの疾患の特徴でもあるのです。そういう意味でも決して諦める必要はありません。

先述のとおりアトピー性皮膚炎は原因と結果が複雑にからみあっている疾患です。そこに「全か無か」という、いわば勝つか負けるかといったような考え方を持ち込むと泥沼に陥りかねません。それはアトピー性皮膚炎の思うツボのように思います。打ち負かすのでもなく、諦めるのでもない――「コントロール」という発想を持つことが、結局は快方への近道であると考えます。

具体的な治療法としては、副腎皮質ステロイド薬の外用、免疫抑制剤の外用、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服、保湿剤によるスキンケア、漢方療法などが挙げられます。ただ、こういった方法論については、アトピー性皮膚炎やその治療法に関する情報が氾濫する昨今にあっては、ある意味で患者様の方が医師よりもお詳しいのかもしれません。

大切なのは、患者様がどこまでのコントロールを望まれるのか、あるいは、望まれないのかということを、医師が的確に把握することだと考えます。たとえば、コントロールはしたいが、それよりもステロイド薬は絶対に使いたくないとおっしゃる患者様もいらっしゃるでしょう。それもひとつの立派なご見識だと思います。

ステロイド薬は、現に生じている炎症を抑え治療を次のステップに進めるにあたって、患者様にとっても医師にとっても非常に心強い薬だと思います。医師の指導下で適切にお使いいただければ、副作用も決して恐れるに足りないと考えます。しかしながら、ステロイド薬を用いることに対してまさにアレルギー反応のような抵抗感を示されている患者様がいらっしゃるとすれば、その方に向かってことさらステロイド薬の有効性や安全性を強調したところで、かえって不安を増幅させるだけの場合もあるでしょう。どのような疾患にもいえることですが、特にアトピー性皮膚炎のような慢性疾患の場合、患者様のそういったご不安やご希望を見極めることが、薬を処方する以上に医師にとって大切な責務であると考えます。

何事も当たり前のことを当たり前にやるのが一番難しいといわれます。それはアトピー性皮膚炎の治療にもいえることだと思います。医師は治療法や薬について、そのメリットとデメリット、リターンとリスクを患者様にご説明し、患者様とともに快方に向けてのルートマップを作成する―。そして、患者様にはその道のりを根気よく歩き続けていただく―。もちろん私ども医師も患者様と一緒に歩かせていただきます。時にはルート修正が必要となることもあるかもしれません。ですが、そうやって一歩ずつ歩みを進める以外、目的地に近づく方法はないように思います。病気が段々と快方に向かうさまを「薄紙をはぐようによくなる」と表現することがありますが、まさにこれはアトピー性皮膚炎治療の本質を突いた言葉だと思います。

※以上は、一般的な症状や治療法などを記したもので、あくまで参考としてご覧ください。自己診断は避け、必ず皮膚科その他必要な医療機関を受診してください。
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